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2007.05.19

読者との集い@名古屋国際会議場

今日、名古屋国際会議場で開催された「塩野七生『ローマ人の物語』読者との集い」に行ってきました。

司会は新潮社の『ローマ人の物語』編集室長・伊藤幸人さんでした。

はじめの15分ほどは、どうしてこのような会を開こうと思ったかについて語られました。「書き下ろしという形でほかの連載も断り、『ローマ人の物語』だけに集中できたのは本を買ってくれた読者のおかげ。お礼を言いたかった」とのことです。「ほかの作家はあまりこういうことは言わないが、本を買って読むのと、図書館などでお金を払わずに読むのとでは意味が違う。買ってくれた人にはお礼にも差をつけたい(笑)」とも。

そのあとは読者から寄せられた質問に答える形で進められました。塩野さんは「座っていると講演会みたいだから」と、終始立ちっぱなしで話しておられました。

「ティベリウスについてどう思うか」という質問は特に印象的でした。伊藤さんによるとティベリウスは意外と読者に人気があるそうで、これに対する塩野さんの答えは「人気があるのはうれしい。カエサルは愛人の一人にならなれそう、アウグストゥスは見事な男だけど私なら惚れないと思いながら書いていた。ティベリウスには母性本能をくすぐられた。押しかけてでも恋人になっていろいろ助言してあげたいと思った。ティベリウスが日本人に人気があるとヨーロッパの人が知ったら、驚くと思う。ティベリウスに代わって礼を言います(笑)」というものでした。「ティベリウスがアウグストゥスの指図に従い、アウグストゥスの娘と結婚したのが納得がいかない」という質問に対しては、「カエサルだったらそのような指図はしなかっただろうが、家父長権の強いローマ社会では、養子にするということが後継者指名の意味をもっていた。好きな人と結婚したいというのは私人の考え方で、公人には許されない」と答えていました。

どの会場でも出るという次回作についての質問には、「今はまだ何も考えていない。あと10年で自分は何を書きたいのかを考えている。私は地中海世界がボーダーレスだった時代が好きなので、紀元後1500年以降のことは手をつけられないだろう。これは日本人に知っておいてほしい、という人を書きたい」と語っていました。

その他は、「防衛省の幹部とローマの軍団長などとの類似点・相違点はあるか」「女性の視点から見て、ローマ史の魅力的な女性は誰か」「塩野さんの人間に対する見方の鋭さは誰によって育てられたと思うか」「遊学先としてなぜイタリアを選んだのか」「このままでは日本は中国に負けてしまうと思われるが、どのようにお考えか」などの質問が取り上げられていました。

これは塩野さんが最初に語っていたのですが、塩野さんは資料の整理はせず、常に頭の中に資料を泳がせておくそうです。そうしていると関係ないと思われるものでも自然と結びついて着想が生まれるのだそうですが、今日のお話でもそれがよくわかりました。質問をきっかけにしてどんどん発想が広がっていき、興味深いお話がいつまでも尽きることがないという感じでした。本当に楽しく貴重な時間を過ごすことができました。

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コメント

ティベリウスが人気なのは現在の日本が豊かな社会を受け継いで苦闘中だからかもしれませんね。
法律家にとっては佐藤幸治「憲法」のはしがきでの「ある作家」として認識されています。この件に関しては「サイレント・マイノリティ」を参照ください。

投稿: madi | 2007.05.20 15:06

はじめまして。
ニフティのトップページから、こちらのブログを見つけました。

塩野七生さん、沢山の素敵な作品を書かれていらっしゃるのですね!
私は読んだことがありませんが、塩野さんの作品、今度、是非、読んでみたいと思いました。

次の作品について、
>常に頭の中に資料を遊ばせておくそうです。そうしていると関係ないと思われるものが自然と結びついて発想が生まれる

というのが、すばらしいなぁ、と思いました。

日々の生活に追われていると、自分に関係ないものは受け入れないような、自分でフィルターをかけてしまうことがありますが、

いろいろなことに興味を持って生きていると、ある時、それが、自然と結びついて、新しい何かが生まれるのかもしれませんね!

自分の周りの小さなことにも、好奇心を持って見つめてみたいと思いました。

いい気づきをありがとうございました!

なっちゃんのママ

投稿: なっちゃんのママ | 2007.05.20 15:08

博多天神での質問に、

①フランス、英国の大統領が交代しますが、ローマ帝国時代の皇帝で現在にも通用する皇帝は誰でしょうか?

サルコジ大統領は戦闘右翼を任せられる人、ただし総司令官ではない。カエサルならば、ブレアを後継者にしたであろう。総司令官としての能力をアウグスツスを例にとって持っている人物であると言っていました。ブレアはアメリカを孤立させないためにやってきた。アメリカが衰退すると塩野さん言うところの中世時代がやってくる。その結果群雄割拠の時代になるとのことです。ローマ人の皇帝は現代社会が一神教の中にあることを考えると使えない。ただし、ネロはミュージシャンとしてなら結構いいところ活躍しているだろう。

②日本の政治の世界に足を踏み入れてみたいか?

政治家は何かしらの選挙民との絡みを持つ。頭を下げるのは嫌い。そう言ったら、比例代表制はいかがですかとのオファーがあった。また、憲法調査会から塩野先生といわれて助言を請われたこともあるが、権力を持ってるのはあなたたち政治家ではないか、私に先生というのはおかしい。権力とは自分以外の運命を左右できることと定義して、現在の政治家は権力を持っていることさえも知らない。マスメデイアも権力を持っていると考えながら、もっていない代表が新聞社である。権力の分布図を作るまでやってみなさい。権力に対して、日本人は悪く使われる心配ばかりする、不幸である。欧米では権力とは本来、よいことにも、悪いことにも使われるものであると考えている。権力がいかに有効に使われるかを導く必要がある。したがって、映画関係者(黒澤明監督に薦められたそうです)に生まれ変わることはありえるが、政治家にはならないとのことでした。

結構鋭い回答です。

投稿: 西牟田 | 2007.05.20 21:32

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